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「……兄さま、ご無事ですか?」
「お、おう」
いつもの笑顔の妹だ。
一応天井裏も確認してカギを閉め、私たちは両親を助けに向かった。
さっき庭を確保した時に接続した太陽電池が予備電源に接続されたおかげで、室内の各セキュリティも回復している。
地下室の電動アシスト付きの重い扉を開くと、ガクガクと震える両親と対面することが出来た。
「松戸家のゾンビはほぼ殲滅した。私たちは街のゾンビを倒しに向かう……夕食までには戻る」
「夕食は兄さまの好きなハンバーグが良いですわ」
ただコクコクと頷く両親を一瞥して、私たちはガレージへと向かった。
先ほど確認しておいた、父親の趣味で買い求めた電動三輪バイクがある。
そこに灯油タンクを2つ積み込んで、私はセルを始動させた。
「兄さま、まずどこへ?」
私の背中にしがみつくようにして、妹が乗り込む。
「まずも何もない。……殲滅だ」
「兄さま素敵ですわ!」
「当然だ!」
電動シャッターが開き、その音に向かって周囲のゾンビが群がる。
片手でトライクを運転しながらネイルガンを撃つのはなかなか難しかったが、後ろに乗った妹が、次々と左右のネイルガンを操ってゾンビを倒してしまうので、私は途中から運転に集中することが出来た。
高級住宅街を抜け、人通りの多い……いや、この場合ゾンビ通りの多いとでも言うべきか、とにかく標的の沢山いる商店街へ向かう。
そこでネイルガンの弾といくつかの足りないものを補充して、私たちは中央のバスターミナルへとたどり着いた。
「なかなかに壮観だな」
思わず口に出る。
バスターミナルには、数百、いや、千匹以上のゾンビが蠢いていた。
――ピロリロリロリロ……
突然、妹のスマホが鳴る。
白衣のポケットで鳴るそれにつられて、周囲の数十匹のゾンビが、一斉にこちらを振り向いた。
「兄さま、今手が離せません」
腰をクイッとこちらへ向けるので、私はポケットからスマホを取り出した。
そこには「父さま」と表示されている。
通話ボタンを押して、私はそれを耳に当てた。
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