見えない偶然

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蒸し暑い夏の8月、外からはセミの鳴き声も聞こえてくる。 私は、この暑い中扇風機しか無い部屋の中汗をかきながら、探し物をしていた。 「無いなあー。押し入れの中かな?」 押し入れを開け、一つの段ボールを開けると、そこには、懐かしい見たことのある古いアルバムが、手に取り開くと、幼い私の姿が、その横には私の手を繋ぎ、嬉しそうに微笑む祖父の姿が。 ふと、カレンダーを見るとお盆の時期が近づいていた。 幼い頃の私は、母子家庭で育ち、母は夏休みに入っても仕事で忙しく、長い休みを祖父の家で過ごす事が、多かった。 海や近くの川で遊んだり、本当に毎日が楽しく、夏休み祖父と過ごすのが毎年楽しみだった。 アルバムを見ながら、祖父との楽しかった日々を鮮明に思いだしていた。 祖父が亡くなって何十年、私も社会人になり、毎日の忙しさの中、祖父の事など忘れていた。 祖父は1人親の私にとって父親みたいな存在で、学生の頃は一緒に何処か行ったりもして、亡くなった後も変わらず大好きだったのに。 目頭が熱くなる、泣くのをこらえ、 「今年は、祖父に会いに行こう」 心の中で誓う。 祖父の墓は高台にあり、見晴らしが良く、祖父が好きだった町が一望できる。 すっかり汚れた墓石を綺麗に清掃し、お花と線香、そして祖父が好きだった日本酒を備え、手を合わせる。 「おじいちゃん、会いに来たよ。ずっと来れなくてごめんね。」 目を閉じながら、記憶が薄れても、想いは繋がっていく、アルバムと言う記録があれば、目を開けると、私のそんな思いが届いたのか、おじいちゃんが 「ありがとう。」 っと、微笑んでる気がした。
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