壱:オトコの正体

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「はっ。お、お初にお目にかかりやす、あっしは猿助(さるすけ)と申しやす。 セキ様にお仕えしてからというもの、いつ“対の方”様にお会いできるのかと、思い描いて幾星霜。 ゆうべ滞りなく儀式を終えられたと聞き、ホッとした次第でござんす。 であるにも関わらず、美穂様にごあいさつが遅れたこと、面目もございやせん! しかしながら、あっしもセキ様も、美穂様がいらしたことにはいたく感激しており──」 「話、長っ! しかもしゃべれるとか! ……って、他にも突っ込みたいトコだけど、まぁいいや。ここ、いろいろヘンな世界みたいだし。 で、あたしになんの用なワケ? つか、なんでそんなに隠れてんの?」 木の幹の陰から、顔だけのぞかせたニホンザル。 機関銃のごとき話しっぷりに、美穂はそこでようやく口をはさんだ。 「……あ、あっしのことは、恐ろしくないんですかい?」 おそるおそるといった様子で姿を現した猿助は、赤い法被(はっぴ)を着ていた。 美穂を見ながら、前足の指先を落ち着きなく絡ませている。 「なにあんた、あたしのこと襲うつもり? 喰っても美味くないよ、あたし」
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