弐:ケガレある乙女

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      《一》 「あれ? 美穂ちゃんだけ?」 「……あ、はい。叔母さんは友達と食事に行くって書き置きが、テーブルの上に。大樹(だいき)くんは、まだ帰ってなくて」 誰もいないのをいいことにリビングのソファーで寝そべり、少年漫画雑誌を読んでいた美穂は、あわてて起き上がった。 「そっか。夕飯は……用意されてるね。美穂ちゃんも、たまには一緒にどう?」 家主である中年のこの男も、帰りが遅いことが多く、今日もそうだろうと思っていたのだが。 「や……あたしは、いいです」 叔母の旦那が、美穂は苦手だった。 風呂をのぞかれたり、いやらしいことを言われたわけではない。 ただ、一度だけ──他の者の目を盗むように、手を握られたことがあった。 「いつもインスタントラーメンとかパンだけでしょ。若いのに、栄養足りないんじゃないかな」 「平気です。あたしの分は、ないし」 実際、美穂の食事が用意されていることは(まれ)だった。 美穂としても、他人の家族団らんに混じる気はなかったので、都合が良かった。 「なんだか悪いね。美穂ちゃんに充分なことができなくて」 「いえ、本当に──」
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