弐:ケガレある乙女

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「だけどさ。 ……甘えてくれて、いいんだよ。一応、オレはキミの叔父さんなんだしね」 気づけば、美穂のすぐ側に『叔父』はいた。 ぞわり、と。嫌な感覚が背筋に走った。 反射的に立ち上がった美穂は、自室へと向かうため、逃げるようにリビングをあとにした。 が、勢いよく階段を昇りきったところで、自らに続く足音が聞こえ、片腕がつかまれた。強引に、振り向かされる。 ──何か、生暖かいモノが、唇に触れた。 「……っ!」 『ソレ』が何かと気づいた美穂は『ソレ』から逃れるために、無我夢中で手と足を動かした。 踏み出した足が空をかき、自分の身体が宙に浮いたような気がした。 落ちる、と、思った時──このまま死ねたらいいのにという思いも、同時によぎったのだった……。        * 頭を打ちつける衝撃も、おかしな方向に腕や足が曲がってしまうこともなかった。 ──階段から落ちたはずの美穂がいたのは、“陽ノ元(ひのもと)”という世界。 (日本じゃないのかよ……) “契りの儀”の直後、菊から聞かされた美穂は、そう内心で突っ込みもしたが。 改めて『違う世界』なのだと、言語を操るニホンザル・猿助との会話で実感させられた。
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