弐:ケガレある乙女

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「……お目覚め? ご機嫌ナナメのお姫様?」 からかうような口調は、聞き覚えのある男のもの──セキコのつややかな声音だった。 ささやき声なのは、寝起きの美穂を驚かせないためだと、解ってしまう自分が口惜しい。 「……なんであたしここにいるの?」 薄暗い部屋の様子から、時刻は夕方くらいだろうと思われた。 天井も障子も、昨晩に見たものと同じ。 ここは、美穂に宛てがわれた部屋だ。 「ゆうべ、よく眠れなかったのね。猿助と話しているうちに寝ちゃったらしいわ。 ……そのまま外で、寝かしておこうかとも思ったけど」 言外に、彼が美穂をここまで運んできたのだと窺わせる。 美穂はムッとしながら上体を起こした。 「じゃあ、放っておけば良かったじゃん! サルなんか見張りにつけて! どうせあたしは、間違って“召喚”されたんでしょ? 元の世界には、いつ戻れるんだよ!」 いら立ちまぎれに片手を布団に叩きつける。 美穂自身、何にこんなに腹を立てているのか分からなかった。 ため息混じりに、セキコが言った。 「……アンタ、“花嫁”って言葉の意味、知らないの?」
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