弐:ケガレある乙女

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障子から透かされた夕日が、セキコの整った顔をかろうじて照らす。 美穂にはそれが、失望を映したような瞳の色に見えた。 「は?」 「どうしても元の世界に『帰りたい』のなら、アタシは止めないわ。 何度も言うようだけど、アンタの願いを叶えるのがアタシの存在意義だから。 “仮の花嫁”のいまなら、コクのじい様に頼めば、すぐにでも戻れるでしょうしね」 衣ずれのさやかな音と共に、セキコは立ち上がった。 冷めた眼差しで美穂を見下ろしてくる。 「望まないことを強いるつもりはないわ。短い縁だったわね」 ひるがえる、あざやかな緋色の衣と、赤褐色の波打つ長い髪。 毅然(きぜん)として向けられた背中は、美穂との一切のつながりを絶つかのようだった。 そのまま部屋を立ち去って行くセキコに、美穂は内心で毒づいた。 (なんだよ……あたしが悪いみたいな言い方しやがって……) 美穂が『男』でないと知ってから、手のひらを返したような冷たい態度。 (そんなに『男』が良かったなら、間違えずに“召喚”しろっての!) 外装だけ見て間違えて注文した商品を、返品する前にこれでもいいかと妥協しかけて、止めたような印象だ。
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