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《三》
チュンチュン、と、鳴いた雀が美穂を見上げ、小さな羽を広げたあと、お辞儀した。
「……コレ、ひょっとしてあいさつしてんの?」
傍らにいる豪奢な着物をまとう男を窺うように見れば、黙って微笑みが返された。
「……よろしく。あたしは美穂。あんたは?」
「チュン太よ」
「……っ、分かりやすい名前。じゃ、オスなんだ」
噴き出しながら握手するような気持ちで人差し指を伸ばすと、雀の“眷属”チュン太に、くちばしで二三度つつかれた。
「半月も何もしないでいるのは退屈でしょう?」
と、セキコに言われ、昨日は市内見物、今日はこうしてセキコの“眷属”と引き合わされていた。
美穂自身、いずれ立ち去る世界と解っていても、気分を切り替え観光にでも来たのだと思うようにしているところだ。
そうして美穂は、可愛いらしい“眷属”と戯れる一方、そんな自分たちを見つめる女装いの男を盗み見た。
(……やっぱり、普通のカッコしてればモテんじゃん)
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