弐:ケガレある乙女

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昨日の市内見物──美穂が勝手に名付けた──は、軒先に棚を出した露店めぐりのようなものだったのだが。 セキコの装いはいつもとは違い、質素で簡略なひとめで『男』と判る着物姿だった。 目を惹く容貌からか、若い女性客から中年の女店主に至るまで頻繁(ひんぱん)に声をかけられ、一緒にいる美穂が居心地が悪くなるほどだった。 「連れがいるの。またにして」 と、やんわり断る口調は彼独特のものだが、応じる者たちは一様に、彼の「また」という言葉を額面通りに受け取っていた。 「どうかした?」 「……別に」 美穂の視線に気づいたらしいセキコに不思議そうに見返され、つんと横を向く。 家のなかでは女の格好をして、外では男の格好をする。体裁を気にかけているのだろうか? 「……なんで昨日は、あんな格好してたのかと思ったから」 ひと呼吸置いて答えれば、ああ、と、事もなげに応じられた。 「派手な衣だと破落戸(ごろつき)が寄って来やすいし、この格好だとアンタを護るにも動きにくいのよ」 「あたしを護る……?」 考えていたこととまるで方向違いの返答に、美穂は思わずセキコを見た。 軽くうなずいて、微笑み返される。
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