弐:ケガレある乙女

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前回とは違い、美穂は菊に用意された木の(くつ)を履き、とぼとぼと山道を歩いていた。 (あたしいつから『構ってちゃん』になったんだろう) セキコの気を惹くような行動を取りながらも、わずらわしいと拒絶し、それ以上踏み込まれないことに、寂しさを感じる。 (学校でも家でも、構われるのが嫌だったのに) 両親のいない可哀想な子。 付き合いも悪く、無愛想で取っ付きにくい──それが、学校での美穂の評価。 養ってやってるのに、可愛いげがない。 厄介者──それが、叔母の家での美穂の評価。 (あたしの居場所なんて、どこにもない) 積極的に『死ぬ』ことなんて、できなかった。けれども、消極的に『死んでもいい』と考えていた。 そして、階段から落ちて──“陽ノ元”という世界で『生きている』自分を感じた時。 美穂は、新しい自分に、生まれ変わったような気がした。 (……そんな都合のいいこと、あるわけないのに) 力なく、笑う。 求めていたのは、自分のほうだったのだ。 『これに着替えて。外で待っているわ』 セキコの言葉が美穂のなかでよみがえる。 待っている──他の、誰でもない、自分を。
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