参:サダメられし出逢い

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「もののけって……オバケみたいなもん? あたし、喰われちゃうの?」 「生気をね。アンタはアタシの“花嫁”だから、連中にとっては『ご馳走』なの。いたぶって傷つけて弱らせてペロリよ」 「なにソレ、超こわいんですけど!」 「……だから、“結界”を越えないでちょうだい。いいわね?」 念を押すようにセキコに言われたのは昨日のこと。美穂は、早くも禁を破ってしまったのかもしれない。 辺りは夕闇につつまれ、どこからかカラスの鳴き声が聞こえ始めた。 大きな黒いアゲハチョウが、ひらひらと目の前を通り過ぎて行く。 (もー、ヤダ!) できるだけ明るいほうへ行きたいのに、気がつけば美穂は、深い森のなかに入りこんでしまっていた。 (出口どっち?) 周りを見渡しても方向すらつかめない。いよいよ美穂は、途方に暮れてしまう。 (どうしよう……) その時、獣のか細い鳴き声が下生えの向こうから聞こえてきた。 (子犬? まさか、迷子犬……じゃないよね。あたしじゃあるまいし) 甲高く、苦しそうな鳴き方をしていなくもない。 美穂は自分を棚上げして、助けを求めるように鳴く声のほうへと歩いた。
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