参:サダメられし出逢い

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「犬……?」 草をかき分けて見れば、金茶色の毛をした獣がいた。 犬に似てはいるが、尾は太くふさふさしていて、足先は細く黒い。 同様に、ピンと立った大きめの耳の毛先も黒かった。 「ひょっとして、キツネ?」 美穂にとって身近な動物ではないため解らないが、犬と言いきるには特徴が違う気がした。 しかし猿助とは違い、話しかけても応答がない。これは、話せない類いの動物なのだろう。 そう納得した美穂の目に、草と薄暗さから見えなかったものが、映った。 仕掛け罠だ。後ろ足が挟まれている。 もがくように足先を動かしてはいるが、抜けそうにない。 「待ってて、いま外してあげるから……」 何か代わりに挟み込めるものをと思い、美穂は自らの木沓を脱ぐ。 バネ式のそこに、ねじ込ませる狙いだ。 「……だめか」 美穂の力では多少開きはしても、獣の足を出すことも木沓を噛ませることもできない。 その間も、金茶色の獣は鼻を鳴らし苦しそうに息を吐いている。 ふいに開いた金茶の細い眼が、美穂を捕らえた。 「もう一回、やってみるから」 安心させるように笑ってみせ、美穂はふたたび罠に手をかけようとした。 瞬間、獣が身をよじり、細長い鼻先を地面にこすりつけた。美穂に何かを伝えるように。
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