参:サダメられし出逢い

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キツネの妖は、“神獣”の“花嫁”の慈悲により解放された──二度とこの領域に立ち入らないとの誓約付きで。 「美穂? 立てる?」 気遣う声音はいつもの穏やかな響き。 差し出される大きな手のひらが、優しく自分に触れたのも事実。 けれども──。 「いらない。あたしは、あんたの『もの』なんかじゃない!」 ()ね付けた、善意。 いったい、何度目だろう? 弾かれた手をもう一方の手で押さえ、セキコが苦笑いを浮かべる。 「言葉のあやよ。アンタがアタシの“花嫁”になる気がないのは知っているわ。 ──アタシが、怖い?」 悲しげで寂しそうな鳶色の瞳。 自分を見つめるセキコの表情に、美穂はたまらずにうつむいた。 「……こわいよっ……」 口をついて出た、本音。 心の奥からの叫びは、あふれた感情と共に美穂の頬を伝った。 「だって、あたし……あんたのことが好きなんだもん……!」 『猛獣』の本性は、もちろん怖い。 だが、それ以上に怖いのは、自分が『拒絶』されること。 「いらないって……元の世界に返すって……『男』じゃないあたしは、必要ないって……」
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