参:サダメられし出逢い

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(あたしはこいつの話、たいてい流しぎみで聞いてんのに) セキコのほうは、美穂の話をきちんと聞いてくれているようだ。 一度、食生活の話題で美穂が『グルメ』という単語を使った際、聞き返され説明したことがあったのだ。 (なんか、ちょっと……嬉しい、カモ) 思わず口もとがゆるむ。 すると、セキコが興味深そうに美穂の顔をのぞきこんできた。 「……あら、ナニその可愛いニヤけ(づら)」 「なっ……。お前があたしのオカ…、母親みたいだなって思っただけだよ! 口うるさいけど、種とか皮とかめんどくさい桃むいてくれるし!」 自分の内面を見透かされたような気がして、美穂はあわてて言い繕う。 ふうん、と、セキコがそんな美穂を面白くなさそうに見返した。 「ってか、あたしにばっか食べさせて、お前は桃、食べないのかよ?」 「……食べるわよ」 言った唇が、美穂の唇の端に触れ、次いで舌先がかすめとるように触れた。 「……っっ!!」 「ご馳走さま。 言っておくけど、アンタの母親になる気は、これっぽっちもないから」 父親にもね、と付け加えながら、セキコは今度は本当に(・・・)自分でむいた桃を口に入れる。
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