第1章

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青春というものはまるで矢のように通り過ぎていくものだ、と、高校進学前に七海の父親に言われた言葉を最近よく思い出す。 まさしくその通り、俺の高校生活は「光陰矢の如し」の言葉通りあっという間に過ぎていった。気がつけば高校3年生。最後の夏の予選をもうすぐ迎えるというところまで時は流れていた。 もちろんその間、何も語るべきことがなかったわけではない。この2年間は今になって思えばなかなかに内容の濃いものであったと言える。 野球日に入部し、俺は1年生からベンチ入りをした。 夏の予選でも3年生の思いを背負ってマウンドに立った。控え投手として臨んだ最初の夏はベスト8まで進み、県内ではそれなりに注目されるチームとなった。 1年生の秋、2年生の春はエースナンバーを背負いマウンドに立った。両大会でベスト8に食い込むも、そこから先の強豪の大きな壁を打ち破れずにいた。 そうして迎えた2年生の夏、俺は再度エースナンバーを背負って、甲子園を目指す…はずだった。
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