1の2章

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口をつぐんだ木曽君は、大木の左側に並び立つ、一基の墓碑へ歩み寄った。 「…ここ…ほんのり、見晴らしええとこやな…。あッごめん。喋ってもうた」 クスッと笑ってしまう。 喋っても全然いいのに。 『…うん。わたしもそう思う。少し開けた景色で…見えるのは住宅街やけどね』 堤防沿いの道の下は、更に一段低い土地になっており、大木や墓碑の後ろには家も建っていないので、さながら…ちょっとした高台から一帯を望めるような場所だ。 目立つといえば目立つ… けれど、近所でも、その存在を知らない人は少なくないだろうと思える。 人通りも少ない道に、ポッカリ広がる空間。 だからか、目立つのはやっぱり木の方で…墓碑はヒッソリした佇まいを、空気に溶け込ましているようにも感じていた。 トクトクトク… かけられるお水を、石が吸う。 「…そこそこ立派な墓石やねんけど、何や…道にある、お地蔵さんみたく違和感ないし…思たより怖ない―…てヤバ。怒られるやろか」 『…』 「ミズキ…?」 1本目のお水を墓碑へあげ終えた手を引く彼は、無言のわたしを首だけで振り向いた。 「な、なぁ…何で黙ってんの?何で…そんな戦慄のまなざしでオレ見るんヤ~メテ~ェ…何か見えたんかぁぁ~…?」 後半は若干、涙声に近い。 「かッ軽んじてゆうたんちゃうけど…ッお地蔵さんに怒られるんか?武者にか!?ミズキにか!?オレ誰に怒られるんさ!?」 『え…何でわたしも組み込まれてるん?』 「恐怖が和らぐ」 一体、何の恐怖…? 『…誰も怒らへんよ』 「ホ…ほな何で戦慄のまなざし向けたんさ自分?」 『え…わ、わたし?』 木曽君が向ける疑惑のまなざしもよく分からないけど、戦慄のって… 『わたしはビックリしとっただけで…木曽君と同じ事、思た時あるし…』 「えッ…ほんまか!」 一気に笑顔になられて、複雑な心境だ。 『お地蔵さんみたく、まわりに溶け込んで見えたから』 「一緒や…気ぃ合う―」 『ほんま、木曽君と同じ考えて…めっちゃショックや…』 「うん…ショックの戦慄か…。ミズキん中でのオレの立ち位置…だいぶ読めたところで。水、2本目いきま~す」
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