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めげへんでぇ~!と、2本目のペットボトルを勢いよく開けたのに、墓碑へはソ~…っとお水をかける。
そのギャップに微笑んだわたしも、リュックからお線香セットを取り出し準備する。
「…なぁ?ここで3本とも…水かけるん?」
『あ…』
一瞬、迷ったものの頷いた。
『今日は…そうする』
「…オレを気にせんでええで?他も参るんやったら―」
『えッ…ええの。今日は…ここだけが目的やったん』
「…そぉなん?ほな、3本ともかけてまうで。あっつ…オレも水かぶりたいわ~」
カラになった2本目を置いて、3本目を開ける腕にも光るのは水じゃない筈だ。
『…あ、最後に墓石の土台と…まわりの地面にあげて?いつもしてるから』
「土台とまわり…いつも…」
何で?
顔で聞かれたわたしは、俯いてしまう。
『…下…まで届くように…』
「なるほど。了解」
『…え』
あっさりした返事に顔を上げ、意外にも笑顔の彼を見た。
さっき何かに怖がっていた様子からして、また怖がられたり…気味悪そうな顔をされるかと…
「下で土に還ってはる人達に、直接は届かんやろけどな。気のモンやろ?恒例やったらやらな気ぃすまんわな」
『ッ…う、うん』
土に…あげたいのは、わたしの気持ちの問題で。
ただの自己満足だろう。
『…分かってくれるて…思わんかった…』
「何て?ミズキ」
『う、ううん?何も』
「?」
首を傾げながら、彼は地面にも水をまいていく。
「明け方、雨降ったのにカラッカラやなぁ。まぁ、サッて降って、パッてやんだし」
お線香に火をつけ終えて、水を吸い込む土や雑草が、少しずつ潤うのを観察し…
ホッとした。
「…水、終了」
『ありがとう…』
「いえいえ」
ペットボトルを置いた木曽君はやっぱり、凄い汗。
「あ、線香OK?」
『うん』
わたし達は、墓碑の前へ…立ち並んだ。
「…戊辰役…東軍戦死者埋骨地…か」
『…』
お線香の匂いに、包まれる。
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