1の2章

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「オレ…歴史アカンけど京都は地元やし…応仁の乱とか蛤御門の変とか、鳥羽伏見…戊辰の役…戊辰戦争とかは知ってる」 『…東軍が旧幕府軍。西軍は新政府軍…とかは…』 「ごめん。知ってるゆうても、詳しくは全く知らん。ここで…えらい戦があったんやなぁて。墓見てようやっと…実感ゆうか…これが昔あったほんまを残してるんや、て…」 しみじみ呟く声を聞きながら、お線香を供えた。 『…ここでもあったけど、あくまで戦場の一つで』 わたしは左の方角を二ヵ所、指差した。 それは鳥羽と伏見の方角だ。 『鳥羽と伏見から、ここ淀』 次に、辺りを大きく示し。 そして、右の方角へ、指を移動させていく。 『…八幡や橋本や枚方…大阪城まで続いていくけども、鳥羽と伏見で戦が勃発…開戦したから鳥羽伏見の戦い、ゆわれる』 「そぉなんや…」 頷いて、手をおろした。 『…続く戊辰戦争は、東…江戸から北の方へ。宇都宮や会津…最終的に北海道…箱館戦争へと続いていくん』 「北海道……遠いな…」 単純な感想には聞こえなかったそれに、深く頷いた。 『ここは鳥羽街道ゆう道。この道の鳥羽方面…左へ行った先で…錦旗があがったって』 「きんき―…錦の御旗!?」 『ッそう!』 木曽君が知ってた事に、思わず嬉しくなったのは仕方ない。 歴史好き達が、さすがに誰でも知っているだろうと思う話は、ほぼ…普通のみんなには通じずじまいが圧倒的多数だから。 分からない相手も知っていた、フレーズ…に触れられた事が、嬉しくなったりするのだ。 それこそ、誰にでも分かる経験かもしれない。 『…この墓碑が立つここには、愛宕茶屋てゆう…茶店があったんやって』 「あたご茶屋…の跡地なんか。ゆわれたらそれっぽい立地や。江戸時代…かき氷あった?」 『え…ふふッ。氷入りの飲み物は昔も町で売ってたけど…氷て自然物で貴重やった上に…』 「あ、冷凍庫ないもんな。せや…もし昔に行く羽目なったら…氷の蔵作って、クーラー屋とかして楽に儲けたらへん?」 『え…それ…当たるかも…』 「せやろ?夏に荒稼ぎして冬は…冬眠」 『え~…働きぃや…』 「ハハッ!ほな働く!」 ひとしきり笑い合い、治まった頃。
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