300年後

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キラッ! 何かが光った。 あまり海面を見上げない私は驚きつつも、その光が気になった。 「カレン。ちょっとお辞儀をして体が固くなったので一泳ぎしてくるわね。」 と言うと、 「まぁ、ジュエルお姉様がお外に出るのは珍しいわ。ええっ。是非泳いでいらして!」 と心底嬉しそうにカレンは微笑んだ。 「ええ。ありがとう。カレンもゆっくり休んでね。」 と言い、光るものに向かって一目散に泳いで行った。 (こんなに海面近くまで泳いだのは、エルサが泡になった日以来だわ。) とまた涙が溢れてきた。 キラッ! 「あっ!」 海面に、一人の男の人が浮かんでいた。 見つかっては大変と、急いで戻ろうとすると。 (えっ?意識がない?) 波に流され、もう少しで沈む寸前だった。 足からは大量の血が流れていた。 (怪我をしているのね!) ジュエルは必死にその男の人を抱えて、波打ち際まで連れて行った。 波が打ち寄せては引く度に、鱗に砂が刺さり、痛くなった。 でも必死に心臓辺りを押してみた。 それは人魚の世界でも同じだから。 「ゴボッ。ゴボッ。」 大量の水を吐き出した。 (ホッ。これで大丈夫ね。) と、あらためて男の人の顔を見た。 まだ閉じたままの瞳は黒々と長い睫毛が伏せられていた。 筋のとおった高い鼻。 きゅっと口角が上がった肉厚の唇。 黒々とした髪の毛。 キメの細かい綺麗な白い肌。 「なんて素敵な人なのかしら?」 と呟いた。 首もとには綺麗なネックレス。 (あっ!このネックレスが光ったのね!) そう思った瞬間。 パチッ! 「えっ?」 パチパチ。 数回男の人は瞬きを繰り返した。 (大変っ!人間には見られては行けないのにっ!) と、ジュエルは一目散に海に戻った? まだ意識が朦朧とする中、その男の人は、 (海の女神に助けてもらったんだろうか?) そう思いながら、また少しだけ意識を手放した。
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