不思議な気持ち

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その夜、床についてもジュエルは寝付けなかった。 目を閉じても、あの男の人の顔が浮かぶ。 (あのまま帰って来てしまったけれど、大丈夫だったのかしら?) (足の傷は大丈夫なのかしら?) などと次々と頭の中に不安がよぎる。 人魚は若ければ若いほど、怪我をしても数秒で傷はふさがるし、病気にもなりにくい。 でも、人魚も歳をとると傷の治りが悪くなり、今のジュエルは人間と同じ様に傷が治るまで時間を要する様になっていた。 人魚は不思議なもので、エルサの亡くなった15歳までは成長はするが、そこで成魚となり、成長が止まり、見た目は亡くなるまでその姿を保つ。 見た目こそ、20歳そこそこではあるが、300歳を越えるジュエルは人間のお年寄りと同じ様に体力的には弱くなり疲れと言う言葉もわかる様になっていた。 だからこそ、あの男の人の痛みが理解出来る様になっていた。 (人間は私達より弱い生き物だと聞いているわ。風邪と言う病気もあると言う。風邪をひかないかしら?顔色も青ざめていたし、唇も青かったわ。) いてもたってもいられない。 気になって仕方がない。 目を閉じても、瞳に焼き付いてしまった様に、あの男の人の顔ばかりが浮かぶ。 (この気持ちは何なのかしら?) (こんなに苦しいのは初めてだわ。) (でも、不思議とあったかい。) ジュエルは、感じたことの無い気持ちに戸惑いを感じつつ、明け方その瞳を閉じた。
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