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その反応を見落とさなかったのが、マリアだ。
「ほら!やっぱりそうよ!ジュエルお姉様が恋をしたのよ!」
とテーブルに手を乗せ、立ち上がり嬉しそうに言った。
「えっ?本当に?」
カレンも頬を赤らめ、嬉しそうだか、まだ信じられないと言う気持ちで呟く様に驚きの声を上げた。
当の本人ジュエルは、
「私が恋?」
と真っ赤な顔を両手で包み込み、自分でも気付かない心に問い掛ける様に呟いた。
(私が恋?)
胸がキューっと締め付けられる様な不思議な感覚。
目をキラキラさせながら、そんなジュエルを見つめる妹二人。
「やっぱり!予想的中だったわね。カレンお姉様!」
と興奮冷めやらぬ顔で、カレンを見つめ、直ぐ様ジュエルに向き直り、
「で?ジュエルお姉様はどなたに恋をされたのかしら?」
と興味深々で訊ねた。
「こ・い?」
またジュエルは呟くだけ。
「もぉ!ジュエルお姉様!ジュエルお姉様は恋をしたのよ!ねぇ?昨日、どんな殿方にお会いになられたのかしら?」
なんて、冷やかすかの如く、マリアは顔をジュエルの顔に近付けた。
(どんな殿方?)
ジュエルの癖だ。
いつも心で言ったん言葉を発する。
良く言えば、おっとりしているのだが、悪く言えば反応が遅い。
マリアは逆に考える前に言葉が飛び出すタイプだ。
カレンは丁度その真ん中。
まだ、ぽーっとしたままのジュエルに痺れを切らすマリア。
「ジュエルお姉様!聞こえていらっしゃるの?」
マリアが再び尋ねると、
「私が恋?」
またボソッと呟くだけだった。
「ジュエルお姉様?」
まだ殻から産まれて間もない、言葉を持たない稚魚の様なジュエル。
そんなジュエルの様子を見たカレンは、マリアの肩に手を置き、
「マリア。座りましょう。ジュエルお姉様自身、今ご自分の心に問うてるのよ。そんな急かせないで。ねっ?」
とマリアに微笑みかけた。
マリアは、途端に自分が嬉しさではしゃいでしまい、ジュエルお姉様の気持ちを考えて居なかったことに気付き、そんな自分が恥ずかしくなり椅子に腰を下ろした。
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