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時は流れて300年後。
人間の世界は、現代と呼ばれる社会へと変化していました。
でも、人魚の世界の時は、人間の世界の1/3のスピードで時を移ろう。
そんな中、人魚姫の育ったお城では……。
「ジュエルお姉さま!そろそろ皆様がお帰りになられる頃よ。お見送りしなければ!」
と、一番下から2番目姫のマリアが私を呼びに来た。
「ごめんなさい。今、行くわ。」
とキラキラと光る銀色の髪と鱗をフワリと回転させ、マリアの後を追った。
前を泳ぐマリアは金色の髪と鱗がキラキラキラキラと輝き眩いばかりだった。
目を細めながら、
「マリアは本当にエルサにそっくりね。」
と呟くと、
「まぁ!ジュエルお姉様!またそんなしんみりした声でおっしゃって!」
と振り向いた。
「確かにみんな私がエルサと似ていると言うわ!でも私はエルサとは違う。私は、普通に人魚の男性と恋をして、隣国を納める人魚となったわ。ジュエルお姉様もいつまで海に身を投げたエルサの事を悔やんでいるの?もう300年経ってるのよ?今日は300年目の供養の日。ジュエルお姉様がどなたにも心を開かずにいらしたから、2番目のカレンお姉様とそのお子達がこの国を納めてくれてるけれど、人魚の寿命も300年前後と言われてるのよ。ジュエルお姉様もカレンお姉様ももう寿命を過ぎている。もちろん私だって!でも、もう私もカレンお姉様も隣国に嫁がれたお姉様方も引退して子や孫に代を譲ってのんびりしてるのよ。いつまでジュエルお姉様はこの国の光のない部屋に閉じ籠っているつもり?ジュエルお姉様も気付いてると思うけど?もう時間が無いことに!私はね……。」
このまま行くと、マリアの話は終わらない。
ううん。
マリアも他の妹達も皆同じ事を言う。
亡くなった父上母上も同じ事を言いながら、亡くなっていった。
それは心から申し訳なく思っている。
それに私自身もわかっていること……。
「マリア!マリアストップ!わかってるわ。マリアごめんなさい。そしてありがとう。」
マリアを包み込むように抱き締めた。
マリアの瞳から涙が一粒零れ落ちた。
「ごめんね、マリア。ありがとう……。」
そう小さく呟き、そっと手を離し、ジュエル自身が流れ落ちる涙を見せない様に泳ぎ出した。
それを見送るカレンは、
「ただ……、ただ私はジュエルお姉様に幸せになって欲しいだけ……。」
とまた涙をこぼしながら呟いた。
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