終末を迎えても……

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明後日の、夕暮れ。 ルカと別れてから、レヴィンは走った。 何処をどのように走ったのかは覚えていない。 気がつくと、アイシャの家の前に立っていた。 大きな足音、砂を滑る靴音。 その音に異変を感じたのか、アイシャがこっそり外を窺うように顔を出す。 「アイシャ!!」 「レヴィン……様?」 呆気に取られた表情のアイシャ。 それもそう。 いつもは日中に語らっているレヴィンが、夜更けに、慌ててやってきたのだから。 「どうか……しましたか?」 心配そうに訊ねるアイシャ。 レヴィンは、肩で息をしながら、アイシャにこの集落の置かれた状況を語る。 「明後日の夕暮れ……この集落は領主の兵達に攻められる。目的は……アイシャ、魔女の捕獲だ。」 レヴィンは、カタカタと震える手をきつく握り、言葉を紡ぐ。 「ま……じょ。」 アイシャも、自分の置かれた状況を理解したのか、血の気の引いた青い顔で呟く。 「アイシャ、集落のみんなを連れて逃げろ!……俺は兵士長。できるだけ時間を稼ぐ。日が暮れるまでに、逃げ延びてくれ……」 この言葉は、いわば不敬の言葉。 領主の目論見を頓挫させる、腹心としては決して発してはならない言葉、だった。 「アイシャ……私は、お前を死なせたくない。危険な目に遭わせたくないんだ。」 そんなレヴィンを動かしたのは…… ……胸に秘められし、恋心だったのだ。
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