終末を迎えても……

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そして。 夕暮れ。 レヴィンは小高い丘の上に居た。 眼下の集落。 おそらく、民達は逃げているだろう。 「民は……森の奥へ逃がします。へんぴな集落。すぐに新しく住み心地のよい地にしてくれるでしょう……」 アイシャが、そう言っていた。 おそらく、民の多くは『残る』と言うだろう。 それでもきっと、アイシャは民を逃がす。 なぜか、レヴィンはそう確信していた。 (これで……良かったんだな……) あとは、集落に火を放ったあと、レヴィンが全速力でアイシャを救出に向かうだけ。 アイシャを隠し、『魔女は焼け死んだ』と、その髪を少し持ち帰れば丸く収まる。 それが、レヴィンの狙いだった。 「集落を……焼き尽くせ!」 レヴィンが右手を上げ、合図を出す。 同時に、集落から火の手が上がる。 「………………え?」 しかし、その火の上がり方に、レヴィンは驚愕の声をあげた。 合図をしてから発火までが、早すぎる。 そして、 「なぜ……あの位置から火が……?」 レヴィンは、『集落の門に火を放つ』指示を出していた。 しかし、火の手が上がったのは、長の家。 ふと、周囲を見回した。 「これで……全軍か?」 レヴィンは兵士長。 作戦実行にあたり、今回は、ほとんどの兵を動員したはず。 領主の威光のために。 しかし、そこに『居るべき小隊』を、レヴィンは不覚にも見落としてしまっていたのだ。 「……ルカ。」 そこからは、もう必死だった。 部下の制止を降りきり、レヴィンは集落へと、走った。
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