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丘から集落まで、全力で走り30分。
集落が焼け落ちるには、充分な時間であった。
燻る黒煙。
骨組みが剥き出しになった家屋。
そして……
道々に倒れる、民の亡骸。
「なぜだ……アイシャ、逃がしたのではなかったのか!?」
民は、おそらく残ると言い張ったのだろう。
アイシャの説得を制して。
「アイシャは必ず助ける……そう私が言っていれば……」
自分の浅はかさを悔いるレヴィン。
そして、その自分の言葉に焦りを感じた。
「……アイシャ!?」
人の気配が付近からはしない。
もっと、集落の奥だろうか……?
レヴィンの脳裏に、ある場所が自然と浮かび……
……足が、勝手に動いていた。
もつれるように、ふらふらと足が進んだ先。
『精霊の塚』
そこには、レヴィンの予想通り、アイシャが居た。
大きな石碑。
精霊に、祈りを捧げる、その場所に……
アイシャは縛り付けられ、副長・ルカの小隊に槍を向けられ、弓を向けられていた。
『魔女狩り』
そんな言葉がぴったりと当てはまるような、そんな光景だった。
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