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「アイシャ!!」
縛られ、ぐったりとしているアイシャを、大声で呼ぶレヴィン。
ぴくり……とその指先が動いた。
アイシャは生きている。
助けなければ。
レヴィンが、一歩踏み出した、その時だった。
「動かないでください。貴方を……謀反人にしたくない。貴方を……殺したくない。」
レヴィンを制するように、ルカの剣が向けられる。
「ルカ……お前が、集落を……」
ルカが、右手を上げる。
小隊が、アイシャを囲む輪を、少しずつ縮めていく……
「待て!!」
レヴィンの叫び。ルカは振り上げた右手を下ろすと、兵士の輪が止まる。
「領主様は……私を裏切った、のか……?」
怒りと畏れで小さく震える、レヴィンの手。
「いや違う。裏切ったのは貴方だ、レヴィン様。貴方は魔女の魔力に侵された。もう、信じることはできないとの領主様のお言葉です。」
うすうす、気づいていた。
長期滞在にもかかわらず、何故呼び出されなかったのか。
副長のルカが、何故集落に自ら赴いたのか……
全ては、領主がレヴィンを見限ったからに他ならなかったのだ。
「そうだな……私は、もう……」
確信した。そして、レヴィンは決意した。
「……毒されてしまったのだろうな。」
アイシャを、守ることを。
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