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「火を放て!!」
非情な、ルカの命令。
それと同時にレヴィンは走り出していた。
石碑に向かい、真っ直ぐに。
アイシャを助けるためだけに。
途中で立ちふさがる兵士たちを、レヴィンは躊躇なく斬り伏せた。
背中を、腕を、矢が穿つ。
そんなことは些細な事だった。
痛みなど、既に感じないほど、レヴィンの想いは感覚を凌駕していた。
(アイシャ……アイシャ!!)
一心不乱に、石碑に向かって走り……
「……そこまでです。」
ルカに、制された。
石碑の、アイシャの足もとからは、黒煙が立ち上ってくる。
息も絶え絶えのアイシャは、少しだけ身をよじる。
「ルカ……退け!」
領土でいちばんの使い手だったレヴィンの鬼気迫る様子に、ルカも一瞬たじろいだが、
「………これほどの傷を負ってなお、魔女のために戦うのですね。……いいでしょう。貴方を謀反人として、私が自ら処刑して差し上げます。」
そこは副長の誇りをかけ、レヴィンに向かい真っ直ぐに剣を構えるルカだった。
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