終末を迎えても……

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レヴィンとルカの決闘は、勝負にすらならなかった。 背に3本。 腕に1本。 それだけの矢を受けながら、痛みすら凌駕したレヴィンの精神力の前に、ルカはただ、無力だったのだ。 「……強……すぎる」 崩れ落ちるルカ。 血にまみれた剣を地に落とし、レヴィンを睨みつけ、そして絶命した。 最後の斬り合い。 レヴィンもルカの斬撃を受けていた。 肩口からは、まるで泉のように血が溢れる。 もつれる両足。 ふらふらになりながらも、レヴィンはアイシャのもとに辿り着いた。 「アイシャ……」 もう、アイシャを縛る縄を解く、断ち切る力すら残っていない。 「レヴィン……様」 アイシャも、既に身体を動かす力など、残っていなかった。 「助けに来た……筈だったのだが。」 「いいのです。私は……最期にレヴィン様に会えて、幸せです……。」 ふたりの、力のない笑顔。 果たして、互いに相手の顔が見えているのだろうか……? その視線は、虚ろなまま交錯した。 「君を……救えなかった。二人で逃げて、新しい生活を始めたかった……」 石碑にもたれかかり、アイシャの手を取るレヴィン。 「私も……レヴィン様と、もっと……」 言いよどんだアイシャ。握られた手に、力を込めた。 「来世では……一緒になれるだろうか……」 少し強い、風が吹いた。 ふたりにまとわりつく黒煙が、まるで舞うように飛んでいく。 「来世ではありません……。私たちはこれから、魂となり……この地を、守り続けるでしょう……」 目を閉じたアイシャ。 微かな声で紡がれる、集落伝統の、祈りの歌。 レヴィンの痛みも、アイシャの苦しみも…… いつの間にか、昇華されたような、そんな穏やかな時間。 そんな時間の中、ふたりはゆっくりと…… ……互いの額を、合わせた。
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