9人が本棚に入れています
本棚に追加
レヴィンは、ヨーロッパ西の領地の兵士長だった。
剣の腕は他の兵士を凌ぎ、戦略にも長け、領主からの信頼も厚かった。
そんなレヴィンは、ある日領主に呼ばれた。
「……お呼びでしょうか、領主様。」
領主には、祖父の代から仕えている。レヴィンも、父や祖父からは、
『領主を守る楯となり、領主の想いを果たす剣となれ』
そう、教えられ育ってきた。
そんな領主から発せられたのは、思わぬ言葉だった。
「北の山中に、魔女の住むという集落がある。なにやら妖しげな秘術を代々、守っているらしい。……レヴィン、そなたは旅人として集落へ赴き、内情を探れ。」
兵士長のレヴィンを単身、潜入のために送り込む。
その表情からも、領主が未知の存在に畏れを抱いていることは明白であった。
「……御意。」
一抹の不安はあったものの、レヴィンはそれを承諾した。
領主の不安を取り去り、領土の安全を守る。
それだって、立派に『仕える』ことだと思っていたからだ。
最初のコメントを投稿しよう!