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「...っく」
大野さんが瞳を潤ませ、声を詰まらせる。
「わわわ、泣かないでくださいっ!大野さん、すごいんだから...胸張っていいんですよぅ」
「そうだ、栞の言う通りだと思うぞ?大野さん、何も恥ずかしいことしてねぇし」
慌てて早口でフォローを重ねる栞と俺。
幸い大野さんは涙を零さず、ゆるりと微笑んだ。
そして遠慮がちに唇を開き、か細い声で言った。
「あの...こんなつまんない話、聞いてくれてありがとうございました!...その、図々しいお願い、かもなんですけど」
震えた声で、でも力強く。
大野さんは言葉を紡ぐ。
「......私と友達に...っ、なってくれませんかっ!」
「え...」
栞が呆気に取られたように目を見開いた。
窓から入り込んだ風が、カーテンをうるさく揺らす。
「...本のことも、自分のことも...こんな風にあったかく聞いてもらえたの、は...初めてで。その、だから...っ......って、私なんかじゃ無理ですかね」
ハハハ、と渇いた笑いを漏らす大野さんに、栞が叫ぶように答えた。
「......私の方こそすっごく嬉しかったんです、今日!......私、ずっとこんなだからけーくん以外友達もいないしひとりぼっちで...でも赤毛のアンのこと、大野さんとお喋りできて楽しかった。だから」
ぺこりと丁寧に腰を折って。
深々と頭を下げながら、栞は言った。
「ふ...ふつつかものですが、どうかお友達になってください!」
...結婚の挨拶かよ。
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