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でも...俺は小さい頃から栞を傍で見てきて、辛い思いをしてるところも何度も見てきたから。
俺はふっと唇を釣り上げ、パタパタと手を叩いた。
「ほぇ...けー、くん?」
「良かったな、栞。やっと念願叶ったじゃん」
「......うんっ」
栞は『赤毛のアン』を胸に抱きしめ、心底幸せそうな表情で晴れ晴れと笑った。
大野さんもそれを見て、ゆっくり頬を緩める。
さっきまで雑音に聞こえていたカーテンの揺れる音が、今は祝福の音みたいに聞こえて。
バタバタ、バタバタ...差し込む夕日が図書室全体を包み込んでいた...。
これで大野さんにも栞にも友達ができて、一件落着!
......と、思っていたのだが。
試練の時は急に上陸した台風のように、ある日突然やってきた。
それは図書室での出来事から、ちょうど1週間後の4限目の前の休み時間に起こった。
前の授業が古典で完璧に眠りの世界にトリップしていた俺は、授業終わりに黒板と睨めっこしながらノートをとっていた。
そんな俺にクラスメイトで友人の相田が声をかけてくれる。
「西浜ー次教室移動だぞ。美術」
「やべ...ノート写せてないわ。悪いけど先行っててくれるか?」
「ん。遅れんなよー」
相田にそう断って必死でノートを写し終え、 絵の具やら美術の授業に必要なもの一式を抱え込んで教室の外に飛び出した、その時。
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