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「開いてます。入っていいですよー」
扉の向こうに声をかけると、「失礼します!」という声とともにギッシギシと軋みながら扉が開く。
その隙間から顔を出したのは、小柄な男子生徒だった。
上靴の色からして、一学年下の1年生だろう。
「あ...」
「まさかとは思うけど栞...知り合い、か?」
驚きながら栞の腕をつついて囁くと、彼女は小首を傾げた。
「1年6組の小泉賢くん、ですよね?一昨日の昼休みに『はじまりは花言葉』って小説を借りた...」
出た!栞の『本に対する驚異的記憶能力』!
1年生男子の小泉くんとやらも、呆気に取られて目を丸くしている。
おい...栞。お前完全に引かれてるぞ。
「そ...そう、です」
口の中でモゴモゴと呟くように言い、小泉くんは抱えていた本をカウンターに出した。
透明感のある少女漫画のようなイラストが表紙の、文庫本よりも少し大きめの本だ。
「返却ですね?私も好きですよーこのお話。児童小説の文庫から出ているシリーズの、少し年上向けの続編なんですけど」
「そうなのか?」
「うん。小学生の頃から読んでるんだけど...こっちのシリーズだと主人公が高校生に成長して、等身大の感じがすごく好きなんだ!あ、あのね、この主人公は...」
ノンストップで蘊蓄を喋り出す栞。
俺は口元を引きつらせながらそれを止める。
「そんぐらいにしとけ、栞。1年生引いてんぞ」
「へ?......あっ」
急に我に返ったらしく...栞、完全にフリーズ。
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