お悩み2 消えたペンケースを探してください!

5/18
前へ
/40ページ
次へ
「ご...ごめんなさい...」 栞は真っ赤になってペコペコと頭を下げながら、掠れた声で呟いた。 小泉くんは驚いたように目を見開き、「あ、いや...平気です」と返す。 重苦しい感じの沈黙が流れたので、遮るように俺は口を開いた。 「で...どうしたんだ?何かさっき急いでる感じだったけど...」 小泉くんはピクリ、とその華奢な肩を揺らし、目線を上げる。 「えっと...あの、その...ペンケース」 「ペンケース?」 栞が反芻すると、突如スイッチが入ったかのように小泉くんがガバリと顔を上げた。 「そう、そうなんです!先輩方、僕のペンケースを知りませんか!?」 「なくなったのか?ペンケース...」 「はい。ないんです。どこを探しても...」 小泉くんは萎れたような表情で俯いた。 俺は栞と顔を見合わせて、揃って首を傾げる。 「見たか?栞」 「ううん...けーくんは?」 「俺はさっき来たばっかだしな。栞が見てねぇなら俺も見てない」 「そうですか...」 小泉くんの瞳が泣きそうに潤む。 ペンケース...かなり大事なもののようだ。 栞も同じことを思ったのか、「その中には何が入ってたんですか?なにかその...大事なものとかは」と尋ねる。 小泉くんは困ったように眉をひそめた。 「何、ってわけじゃないんですけど...あのペンケース、祖母に入学祝いに買ってもらったものだから」 確かに誰か大切な人に贈ってもらった物って、大事にしたいよな...普通。 小泉くんは独り言のような小さな声で言う。 「教室を探してもなくて、家にもなくて...友達のに紛れてるとかもなくて。それなら図書室に忘れたのかなって思ったんですけど...違ったのかぁ...」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加