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「そう、ですか...」
栞が少し俯いて、唇にそっと指を当てた。
「えっと、聞いてもいいですか?...小泉くん、ペンケースがなくなったことに気づいたのはいつですか?」
「気づいたのは確か...昨日の1時間目に使おうとした時、です。一昨日の昼休みの後は体育と音楽だったから...ペンケースを出すことがなくて」
「それで、図書室で忘れたのかもしれないと考えたんですね...」
栞はますます悩ましそうに眉をひそめ、目を伏せて考え込み出した。
完全に小泉くんが置いてけぼりになりそうだったので、俺も何か聞いてみようと口を開く。
「さっき、ペンケースはおばあさんに買ってもらったって言ってたけど...本当に、その中身にも大切なものが入ってたとかはなかったのか?」
さっきも栞が聞いていた質問だけど...やっぱり気になったのでもう一度聞いてみる。何となくその中身に意味がある気がするんだよな...。
小泉くんはちょっと困ったような表情を浮かべ、さっきよりも細かく答えてくれた。
「いたって普通の文房具しか入ってなかったと思うんですけど...あの、メモ用紙みたいなのありますか?もう1回何が入ってたか書き出してみたくて」
チラリ、と横を見ると完全にシンキングモードに入り込んで固まっている栞の姿が目に入った。...こりゃダメだな...。
俺は慣れないカウンターを探り、何とか裏紙らしきものをクリップで束ねた紙束を見つけ出した。
ペン立てからHBの鉛筆も取り出し、用紙と一緒に渡す。
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