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ありがとうございます、と呟いて小泉くんはそれを受け取り、左手にシャーペンをさらさらと紙に走らせた。
几帳面そうな角張った字がペンケースの中身を綴っていく。
シャーペン2本とHBのシャー芯、シンプルな白い消しゴム、15センチ定規、携帯型のハサミ...。
「確かに...特に変わったものは入ってないよな」
「はい...思い当たるものはこれぐらいしかないんですけど...」
2人揃って首を捻っていると、シンキングモードだった栞が勢いよく顔を上げた。
「いえ、他にもあるはずですっ!」
「「えっ?」」
栞は2つに結んだ髪をゆらゆら揺らしながら立ち上がり、小泉くんの手にしていたシャーペンを取り上げた。
そして紙の余白に『押し花の付いた栞』と書く。
小泉くんは驚いたように目を丸くして固まった。
栞は急にスイッチが入ったように語り出す。
「小泉くんはよく図書室に来てくれますけど、いつも本を読む時に...綺麗な押し花の付いた栞を使っていました。かなり古いもののようだったけど状態も綺麗で...きっと丁寧に扱ってたんだろうなって。...ペンケースにはその栞も入ってたんじゃないですか?」
「そうなのか?」
隣に座って少し俯いている小泉くんを見て問う。
小泉くんはふっと目を逸らして頷いた。
「...はい」
「どうして黙っていたんですか?」
栞が単刀直入に聞く。...いや、そりゃあなんか理由があるんだろうからそこはちょっとオブラートに包むとかしろよ。
普段は自己主張が弱すぎるぐらいなのにな...。
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