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小泉くんは遠慮がちに口を開いて言った。
「前に一度...言われたことがあるんです。こんな女の子みたいな栞、大事に持ってて気持ち悪いって」
「「えっ...」」
俺と栞の声が重なる。
栞はアワアワと両手を振りながら慌てて返した。
「ご、ごめんなさいっ!そういうことを思い出させたかったわけじゃ、えっと、それに、私達はそんなことっ」
「わかっています。先輩方がそんなことを言う人じゃないってこと」
小泉くんは苦笑し、そして小さく「...でも」と俯いた。
制服の裾を握る手が微かに震えているのが見える。
「でも、だから僕...それ以来あの栞は人の目に付く場所で使わないようにしていたんです。だけど今回読んでいた本に、花の名前がたくさんでてきて...家であの栞を挟んだまま、学校に来てしまったんです」
「それでそのまま学校に持ってきたってことか」
「はい。途中で気づいたんですけど...この図書室、そんなに知り合いに会わないから大丈夫かなと思って。まさか失くしてしまうなんて」
小泉くんは悔しそうに唇を噛んだ。
多分学校に持ってこなければ失くしていなかったのに、と悔やんでいるんだろう。確かに普段持っていかないものに限って忘れたり失くしたりすることもあるよな...。
俺が何か言おうと口を開きかけた瞬間、黙って考え込んでいた栞が思い出したように顔を上げた。
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