お悩み1 友達がほしいです!

3/14
前へ
/40ページ
次へ
ギギッ、ギシギシィ……。 古くて重い木の扉を押すと、ひどくきしんで苦しげな音を立てた。 プラスチックの安っぽいプレートには、消えかかった『図書室』の文字。 「...栞……いるか?」 「あっ、けーくん!やっと来た?」 予想通り、貸し出しカウンターの向こう側からふわりとした声がした。 耳の下でふたつに結んだ髪が、ユラユラ揺れる。 俺は溜息をつきながら、熱心に文庫本を読みふける幼馴染の名前を呼んだ。 「...いい加減そのけーくんってのやめろ……栞」 「ふえぇ、なんで?けーくんはけーくんじゃん」 きょとんと首を傾げる栞。……ダメだ、通用しねぇ……。 俺は諦めて栞の隣に座った。 俺の名前は西浜(にしはま)(けい)。蛍と書いてけい、と読む。 正直この名前、あんまり好きじゃないんだよな...。 本好きの同級生・凜憧(りんどう)(しおり)とは、幼稚園時代からの幼馴染だ。 もともと大人しい性格だった栞は、成長してからもっと大人しくなっていった。 教室では静かでほとんど話さず、ずっと本を読んでいる。 そんな栞だけど、本のことになれば無敵だ。瞳をキラキラ輝かせ、 誰よりも楽しそうに話す。 俺はそのキラキラしてるときの栞が素の姿だと思うけどな。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加