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ギギッ、ギシギシィ……。
古くて重い木の扉を押すと、ひどくきしんで苦しげな音を立てた。
プラスチックの安っぽいプレートには、消えかかった『図書室』の文字。
「...栞……いるか?」
「あっ、けーくん!やっと来た?」
予想通り、貸し出しカウンターの向こう側からふわりとした声がした。
耳の下でふたつに結んだ髪が、ユラユラ揺れる。
俺は溜息をつきながら、熱心に文庫本を読みふける幼馴染の名前を呼んだ。
「...いい加減そのけーくんってのやめろ……栞」
「ふえぇ、なんで?けーくんはけーくんじゃん」
きょとんと首を傾げる栞。……ダメだ、通用しねぇ……。
俺は諦めて栞の隣に座った。
俺の名前は西浜蛍。蛍と書いてけい、と読む。
正直この名前、あんまり好きじゃないんだよな...。
本好きの同級生・凜憧栞とは、幼稚園時代からの幼馴染だ。
もともと大人しい性格だった栞は、成長してからもっと大人しくなっていった。
教室では静かでほとんど話さず、ずっと本を読んでいる。
そんな栞だけど、本のことになれば無敵だ。瞳をキラキラ輝かせ、
誰よりも楽しそうに話す。
俺はそのキラキラしてるときの栞が素の姿だと思うけどな。
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