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「何の本、読んでるんだ?」
栞の手元を覗き込むと、栞はぱあっと顔を輝かせてふわっ、と微笑んだ。
「えっとねぇ、『西の魔女が死んだ』っていう本だよ。題名だけ聞くとファンタジー作品かなって思うでしょ?でも違うの。主人公の少女・まいとそのおばあちゃんの話なんだけど、すごく心が温まる話なんだ...けーくんも読んでみなよ」
「んー、できたらな」
「もー...そう言っていっつも読んでくれないよねっ」
むくれたようにぷうっと片頬を膨らませる栞。
あのなぁ、俺だって勧められた本を読んでみようとしたことぐらいあるぞ?
……ただ、読むのが恐ろしく遅いから途中で挫折するんだよな...。
なんとなく居心地の悪くなった俺は、カタリと立ち上がった。
「で、俺は何すればいいんだよ?」
「あ、そこの本こっちに持ってきてくれないかな?私1人じゃ運べなくて」
「ん、わかった」
俺は返却棚に積まれている本を抱えあげる。
ハリーポッターか...映画は見たんだけどなぁ。
パラパラとページをめくって挟まっている物がないかチェックする。
何もないよな...。
コンコン。
古い扉がノックされる音がした。
「本の返却、かなぁ?」
栞が首を傾げた。
「あ、入っていいですよ」
俺が扉の向こうの誰かに声をかけると、重い扉がゆっくりと開いた。
それと同時に入ってきた明るい茶色の髪の女子生徒が、消え入りそうな声で「失礼します」と呟く。
なんか、派手な見た目なのに意外な感じだな...。
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