お悩み1 友達がほしいです!

5/14
前へ
/40ページ
次へ
「あっ、...」 栞が隣で小さく声をあげる。 「どした栞?知り合いか?」 「ええと...大野(おおの)日和(ひより)さん、ですよね。3組の」 「……っはいそうですけど...どうして私の名前...?」 俺も不思議になって栞の方を見る。 なんで知ってるんだ? 栞は首を傾げて、こともなげに口を開いた。 「たしか先週の水曜日...昼休みに『赤毛のアン』を借りた方ですよね?」 「へ……」 大野さんとやらは面食らったように押し黙った。 出た、栞の『本に対する驚異的記憶能力』! 普段はそこまで記憶力が良いわけでもないのに、本のことになると恐ろしいほどの記憶力を発揮するのだ。 うーん、例えば...3歳のときに絵本の文章を暗記して唱えていたり、5歳の頃に『薔薇』なんて漢字を書いていたり(小説に出てきたらしい)。もはや伝説に近いエピソードがてんこ盛りだ。証言、by俺。 「今日はご返却ですか」 「あ、その赤毛のアンを返しに来たんです」 しばし固まっていた大野さんは、慌ててピンクのサブバッグから大きめなサイズの本を取り出す。 「…………」 栞がカウンターに身を乗り出して貸出カードにハンコを押している間、大野さんは思い詰めたように俯いて黙っていた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加