君といた僕を失っても

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「別れみたいな言葉、言わないでくれよ!」 「……どちらにしろ、私は限界だったの。お母様とお姉さまの魔力も、もう、尽きるから」  涙の粒が、地面へと落ちる。  白い、白い、美しい真珠のような固まりとなって。 「だめだ、だめだ……!」  言いながら、自分の言葉がひどく薄いものに感じられた。  ――それは、眼の前の彼女のように、自分の中の何かも、飛び去っているのに気づいたからだろうか。 「ありがとう。私の大好きだった……優斗」 「……遥!」  初めて、お互いに名前を、呼び交わせた僕達。  手を伸ばし、彼女の形をつかもうとする。  けれど。 「あ、あぁぁぁ……!」  絶叫し、彼女を抱きしめようとするが、なんの感触もない。  視界に広がるのは、白く、無垢な、丸い泡。澱みのない、美しい、命のかけら。  膝を地面に崩して、僕はただ、浮かぶ泡を見つめることしかできない。  全て、儚く散っていく、彼女だったものの行き先。  残された僕の視界には、ただ灰色となった、歳を経た故郷が映っていた。  ――そしてある時、ふと気づいて、呟いた。 「なんで、俺、こんなところにいるんだ……?」
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