君といた僕を失っても

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 *** 「なんで帰郷したんだ?」 「懐かしくなって、かな」  ウェブ越しでない友人達との飲み会は、距離感の近さもあって、より懐かしさに浸ることができる。 「駅前、シャッター通りになってて、驚いた」 「寂しいよなぁ」 「……ユウ。なにか、あった?」 「なにかって、なんのことだい、リン」 「いや、うまく言えないけどさ……なんか、この間から数日で、妙に大人っぽくなったって言うかさ」  特になにもないけどな、と答える俺に、ミツが携帯を掲げながら聞いてくる。 「そうだぁ、あの子覚えてるぅ?」 「どの子のこと?」 「ほら、ユウが好きだった――今村さん」  この間も話題になった、電子データのアルバム。今日は携帯端末に保存して、ミツが持ってきていた。  写真を見ながら、当時の記憶が蘇ってくる。 「……あぁ、懐かしいね」  答えながら、でも、心は静かだった。  心が躍ったはずの、初恋と人との、一夏の想い出。  そのはず、なのに。 「あらぁ、冷めてるぅ。そういう態度、よくないぞぅ?」  口をとがらせるミツは無視して、写真を何枚かスクロール。  そのなかで、ふと……ある一枚の写真が、眼に入る。 「ここにいるの、誰だっけ」
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