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一番後ろで「バチバチっ」と火花の散るスタンガンを手に持って立っていたのは、未だに名前もあだ名も思い出せない、バンダナのガリ。
「ふふふ……悪いな皆の衆。姫の処女は拙者が頂くでござるよ……」
そう言ってよだれを拭いたバンダナのガリに、イケメンが飛びついた。
「ヴぁあぁぁァァアアぁ!」
ゾンビと化したイケメンは、何度もスタンガンの電撃を受けながらもバンダナのガリの首を噛み千切る。
無心にそこに積み重ねられた死体を食い漁るイケメンゾンビの後頭部、脊髄の部分を狙って、姫の鋭い日傘の先端が「ずぶり」と差し込まれた。
「イケメンでもゾンビはやだぁ」
真っ白い日傘が赤黒く染まってゆく。
姫はもう一度体重をかけて傘を置く深くまで差し込むと、イケメンゾンビが動きを止めたのを確認して、にっこりと笑った。
護衛は居なくなってしまったが、バスターミナルはもう目と鼻の先だ。
「救助に来る自衛隊の中に、イケメン居るかしら?」
そう呟いてイケメンから日傘を引き抜くと、姫はバスターミナルへ向かって、散歩を再開した。
――太田沢 姫(おおたざわ ひめ)の場合(完)
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