1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
第一章 ユートリア
「ねぇ。彼を見た?」
俺は探している。いつものことだけど。
「ユートリアを知らない?」
その場にいる皆が首を横に振る。皆、知らないようだ。そう思ったが、その中の一人が手を上げて、知っているという合図を俺に送ってきた。
俺はそいつの傍に行った。そして尋ねた。
「どこで見た?」
そいつは、手元にある本から目を上げずにこう言った。
「三日前、砂漠で」
「砂漠? 様子は?」俺は、そいつに詰め寄る。
「……嬉しそうに……探してた。何かを」
「何かって何……」
そう聞きかけたが、そいつは、もう言うことは無いと言うように、俺を押しやった。
まぁいい。情報は手に入れた。
だけど、探し物か。そうなると暫く帰って来ないに違いない。彼の探し物は中々見付からないだろうから。なんたって人生そのものなのだから。
最初のコメントを投稿しよう!