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伊佐屋 凪(いざや なぎ)の場合
父は3時間前に死んだ。義母はさらにその1時間前に死んでいる。
僕は義妹の正面に正座して、自分の左手の薬指から繋がる赤い毛糸の先が、彼女の左手の薬指へと繋がっているのを視線でたどった。
そのまま腕、体、顔と視線を上げる。
最後にたどり着いた僕の視線を受け止め、しっかりと見つめ返す義妹に僕は頷いた。
「……菜実。綺麗だ」
心の底からそう思い、僕は彼女に優しく笑いかける。
菜実も、震えながら微笑み返してくれた。
僕らの住むこの鹿翅島には、今やゾンビが溢れている。それはいつも通りの金曜日の朝に突然始まった。
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