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手書きの看板が画面いっぱいに表示される。
『ゾンビの殺し方』
本屋のポップのような、油性マジックで書かれたカラフルな文字。
約2秒間表示されると、カメラはとつぜんぐるりと向きを変え、見た人を少し不快にするような、派手な服を着た10代後半から20代ほどの男を映し出した。
男はニヤリと、不快感を更に上げるような笑顔を見せ、小さく手を振る。
「どうも! おなじみ東海林西山っす! 今回はー! 突然島に現れたゾンビを効率よくブッ殺す方法を考えてみた!」
元気よくそう宣言する男の後方、フラフラとカメラに近づいて来るゾンビが映る。
男は慌てることなく地面に並べてあった様々なものの中から、包丁を手に取ってカメラに良く見える様にかざした。
「早速来たんで、まずは百均の包丁から?」
どこか壁にでも固定したのだろうか、カメラの角度を調整する男の顔がどアップになる。
満足したらしい男は「行くっす」と握り拳をカメラに向けると、包丁を頭上に構えて走り出した。
予想外にゾンビの場所は遠く、カメラにはゾンビの頭を何度も包丁で突き刺す男が小さくかろうじて映っているような状態がしばらく続く。
動かなくなったゾンビをつついて確認し、荒く息を吐きながらカメラの前まで戻ってきた男は、包丁を地面に投げ捨てると、汗を拭いた。
「だめっすわ、包丁。めっちゃ近づかなきゃダメだし、頭蓋骨突き通すの大変すぎ」
呼吸を落ち着けながらカメラの外、地面に並べてあるらしいものをゴソゴソとあさる。
つぎに男の不快な顔がカメラに移されたときには、その手に直径20センチ以上もあるガラス製の灰皿が握られていた。
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