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「じゃじゃーん! そこでこれ! ケミカル兵器? なんかゾンビってぐちゃぐちゃのイメージあっから、消毒したら効くんじゃないかって思って、『無水エタノール』たっぷりの水鉄砲ぉぉ! よっしゃきたぁぁ! みずでっぽぉぉぉう!」
ハイテンションで「ぽぽぽぽぽぽぽぽぉぉぉぉう!」と叫びながら、画面奥から近づいて来るゾンビへ何度もエタノール水鉄砲を打ち込む。
ゾンビの顔や皮膚にかかった無水エタノールは「しゅわぁぁぁ」と泡に変わったが、ゾンビがそれに何かの反応を示すことは無かった。
ほんの数十センチの距離になるまでエタノールを撃ち続けていた男は、ぎりぎりで地面からガラスの灰皿を拾い上げ、ゾンビの頭に振り下ろす。
ゾンビの頭は「グシャ」と簡単につぶれ、フレームアウトした。
「無水エタノール無能すぎ。全然きかねーし。っつーことで、次はその辺に落ちてる石!」
握り拳大ほどもある石を拾い上げ、次々と遠くのゾンビへ投げつける。
本人は気付いていないだろうが、こんなにたくさんの大きな石ころが落ちている場所は、日本中探してもなかなか無いと思われた。
10回以上石を投げたが、そのどれもがゾンビに致命傷を与えることは出来ない。
最後にはガラス製の灰皿を手に持ってツカツカとゾンビに近づき、「グシャ」と頭を潰して「石もダメだわ」とカメラの前で肩を落とした。
疲れたのだろう。
しゃがみ込み、フレームアウトした男の派手なキャップの先だけが画面に映っている。「次なににすっかなぁ」とつぶやく声と、ゴソゴソと次のアイテムを探す音だけが聞こえる映像に、遠くの方からふらふらと近づくゾンビの群れが映り込んだ。
男は気付いた様子も無いまま「金属バットじゃありきたりだしな……消火器で一網打尽?」などとブツブツ言っている。
しばらく男の独り言と後ろをフラフラと歩くゾンビの群れの映像が続き、それは突然エンジン音が鳴り響くまで続いた。
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