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「やっぱコレっしょ! チェーンソー!」
――ヴオォォーン! ドドドドド
小型の内燃エンジンを轟かせ、チェーンソーが勢い良く回転する。
その騒音を聞きつけ、男が全く気づかないうちに周囲をうろついていたゾンビが一斉に集まった。
「……ヴぁぁぁあァァああぁアぁぁ……」
「え? うぉ?! おおおおお?!」
突然ゾンビに声を掛けられた男は、チェーンソーを振り回す。
周囲何体かのゾンビは、その大木をも切り裂く鋭利な刃で腕や首を切断されて血を吹き出して倒れたが、チェーンソーの爆音で次々と集まるゾンビの人海戦術に男は耐えきることはできなかった。
何かにぶつかってカメラが90度倒れ、偶然ゾンビに押し倒されている男を映し出す。
男の顔や体には既にえぐられたようなゾンビによる噛み傷があり、その命は風前のともしびだった。
「さ……さいごー! ガソ……ガソリン!」
男は叫びながら、赤いスチール製のガソリンタンクのフタを開け、その場にまき散らす。
数十体のゾンビに押しつぶされる様にして食われながら、男は電子ライターの着火ボタンを押した。
画面に写ったのは、爆発。
黒煙をもうもうとあげ、小さな爆発と炎の渦をまき散らして男とゾンビは燃え上がる。
けたたましいチェーンソーの音に周囲のゾンビがまるで焼身自殺でもするように、炎に次々と飛び込んでゆく様が映し出され、それはカメラの目の前にまで迫った炎がカメラを壊してしまうまでいつまでも続いた。
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