1 蛇の骸

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 コーサクは奥飛騨に住んでいる。平湯、福地、新平湯、栃尾、新穂高…………5つの温泉からなる秘境だ。  コーサクの実家は温泉郷の中で最も古い歴史を持つ、平湯にある焔荘(ホムラソウ)だ。姉小路氏に仕えていた忍者の末裔だ。  平湯神社で蛇の死骸が見つかった。  銃で撃たれていた。  姉小路家に伝わる大蛇だ。  弾丸自動鑑定システム《BIRI》にかけた。  南部14年式拳銃だった。南部麒次郎が造った撃鉄のない拳銃だ。戦闘にはあまりにも不向きな銃で、自決用として用いられていた。  旧日本軍の兵士が…………!?  焔荘は塗屋造りの宿だ。東日本では蔵造り、西日本では塗屋造りが発達した。壁は漆喰で塗り固められ、  菱形の虫籠窓が和の趣を感じさせる。  近くにある水樹家の玄関には、蕨縄などを十字に結んだ関守石がある。これは進入禁止を意味する。  焔家では炎系統の魔法が、水樹家では水系統の魔法がそれぞれ使える。  新平湯には鷲のモニュメントのあるビルがある。鷲は権威を現す。  福地湯の近くには羊のモニュメントのあるビルがある。羊は豊穣を現す。  そーいえば水樹家の玄関にはライオンのレリーフがある。ライオンは水の守護神だ。  新穂高湯には繁栄を表す麒麟のモニュメントがある公園がある。  栃尾湯には知恵を象徴するフクロウのモニュメントのあるレストランがある。  本宅に入ると父親の純一郎の声がした。  兄と話しているのだろう。 「ベンケイの製造は順調なのか?」  
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