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しつこい。
だが、次の角を曲がれば、もう理科準備室を兼ねた写真部の部室まですぐだ。
そうしたら、このデータをネットストレージにアップして……。
「ヴぁあぁあアぁあぁ……」
最後の角を曲がった途端、俺は誰かにぶつかって派手に吹っ飛ぶ。
本日2回目の転倒。
俺と一緒に転がったカメラの無事を確認していると、俺にぶつかった誰かの手が、俺の肩にかかった。
「あ、悪い、ちょっと急いでて……」
そこにあったのは、頬肉の無くなった口から覗く血まみれの歯。濁った眼。
その変わり果てた顔からは想像できないが、身に着けている衣服から考えると、生活指導の体育教員か誰かだろう。
そいつは俺に向かって、その血まみれの口をぱっかりと開き、噛みつくように覆いかぶさろうとした。
「入矢君あぶない!」
俺を追いかけていた女が、ラグビーかレスリングのようなタックルを教員に決める。
そのまま壁にどすんとぶつかった教員は、だが、そんなことを気にも止めていないかのように、女の肩にかぶりついた。
「きゃあぁぁぁぁ!」
俺はと言えば、その隙に部室へと滑り込む。
あらかじめ起動しておいたPCにメモリを突っ込み、データを複数のネットストレージへアップロードするマクロを実行すると、やっと一息ついた。
その間にも廊下からは激しく争う音が聞こえる。
俺は一番でかい一脚を手に持つと、そっと部室のドアを開けた。
女に覆いかぶさるようにして廊下に転がっている教員をよく観察する。
……これ、所謂ゾンビってやつか?
見た目、動き、唸り声。
どれも典型的で由緒正しいロメロのゾンビにそっくりだ。
俺は女を今まさに食い殺そうとするゾンビの写真を何枚か撮影し、少し迷った末に、脊髄へと力いっぱい一脚を突き刺した。
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