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しにそうなほど
死ねばいいのに。
泣きじゃくって俺にすがる男を見下ろしながら思う。
ヘルメットをかぶった形でくせがついた髪は伸びすぎて跳ね上がり、みっともない。首の後ろ、擦れてほつれかけた襟は垢で黒く縁取られている。
繰り返し着て脆くなった作業着の布地は薄く摩耗し、背中に小さな穴が開いている。腰を曲げてその穴に指を差し入れると、日に焼けたうなじが震えた。
「俺のこと好きなんだ?」
そいつは馬鹿みたいに何度も頭を振って頷く。
「足、離せよ」
掴まれた足を揺すって促すと、おずおずと手を離された。
「ご、ごめん。おれ……気持ち悪い、よな?」
見上げた顔は涙と鼻水に土埃が混ざって、黒い筋がついている。泥だらけの俺の作業着なんかに引っついたりするから、ただでさえ無様な顔が強調されてしまった。
必要最小限の照明だけを残して、周りの投光器のスイッチを切ってまわる。一周して戻って来ると、まだあいつは座り込んだままだった。
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